アイスキャンディ・マイラブ

札幌ドーム前に住んでるパンダの雑記

私の愛した気まずい

その日、錦戸亮がわれわれにむかって「エイター!」と叫んだ。きみがエイターとゆったから、9月9日はエイター記念日。いままで、「すばるくんはようゆうけど俺は恥ずかしい」とエイターと呼んでくれなかった錦戸亮が、GR8ESTから「エイター」と口にするようになった。つまりそれは、そういうことなんだろう。渋谷すばるが言わなくなったかわりに、錦戸亮がわれわれをそう呼ぶ。彼の気まぐれではなくて、その後、台北でも聞くことができた。

わたしはす担だが、どんなすばるくんが一番好きかといえば、「錦戸亮の隣で歌う渋谷すばるが好き」というす担だ。二人が声を重ねる瞬間が一番好きだ。歌うすばるくんを見ている錦戸亮が好きだ。気まずいと呼ばれた二人が好きだった。

NEWSの現場を見たりすると、錦戸亮は二つのグループから一つを選んだのではなく、渋谷すばるの隣を選んだのではないかと思うことがある。渋谷すばるは、錦戸亮にとって運命だったから、その隣を選んだんじゃないかと。亮ちゃんはセンターになりたくなかったのではないかと私は考えていて、ゆえに渋谷すばるというセンターのいる関ジャニ∞がよかったのだとも思っている。もっともそのすばるくんが抜けて、錦戸亮関ジャニ∞でセンターになるというのは、本当に皮肉だ。

でも、その彼がすばるくんに「俺が背負っていくから」とメールをしたというのは、錦戸亮がみんなの中心に立って歩きだせるくらい、強い男になったのだと感じさせる。

 

メンバー脱退後のKAT-TUNやNEWSは、暴力的なまでに前へ奔ってゆくように見えていた。手越祐也は4人になってからほかの3人に「俺が斬り込み隊長になる」と宣言していて、それはまさに、彼らが強くなると決めたことの象徴だった。翻ってGR8ESTのエイトを見ると、彼らはこんなに弱かったのだな、すばるくんに依存していたのだなと思い知らされた。強がったり、わかりやすく感情を昂らせたり、泣いたり、いろいろなのだけれど、すばるくんは6人の本当に心の柔らかな部分まで食いこんでいた。錦戸亮は強くなったと書いたが、たぶんまだ、大部分が強がりだ。でも六人ともがなんとか強くなろうとしている。

 

このエントリーの目的は、渋谷すばる錦戸亮の運命だったんじゃないかということを書くことで、だからすごく頭の煮えたことを書くことになると思う。着地点もよくわかっていない。なぜならすばるくんは亮ちゃんの運命だったと言いたいだけだからだ。

脱退するという発表があって、最初に錦戸亮からの言葉があったのは「13歳だった僕を導いてくれた先輩」だった。それまでも私は、すばるくんは亮ちゃんの運命だと思っていたが、これほどはっきりと本人から運命だと語られたような言葉があるだろうか。共に過ごしたとか、追いかけたとかじゃなくて「導く」という言葉には、深い色合いがにじんでいないだろうか?

そこからはしばらく、スポットライトが当たっていたのは三馬鹿だったりして、気まずいを見たい私は少し歯がゆい思いをした。自分に思い入れのあるコンビだけを見たいというのもひどい話だし、三馬鹿の絆が特別だったことはわかっている。安田章大の怪我がなければもう少し全員揃っての露出もあったかもしれないが、こればかりは仕方がない。

Mステ、クロニクル、Mデイと終わりの時間が近づく中でも、気まずいはほとんど見られなかった。そして関ジャムだ。亮ちゃんは彼自身とすばるくんを「ジョンとポールのようとは言えないけれど」と、そうコメントした。ジョンとポール。正直に言うとビートルズのことはそんなに詳しくない。それでも亮ちゃんがその名に託したものが見えた。あのジョンとポールに、亮ちゃんは自分とすばるくんを例えた。なれなかったとは言ったけれど、その二人は亮とすばるより短い時間で傍を離れたんだから、超えてるといったっていいんじゃないか。だから私はもう一度言いたい。渋谷すばるは、錦戸亮にとっての運命だ。

その後のセッションで亮ちゃんはようやく泣いて、泣きながら最後の曲を終えた。「やっぱり寂しいなあ、なあ、すばるくん」と彼はすばるくんの隣で言ったけれど、すばるくんは大きな瞳に涙をためたまま、微動だにしなかった。言葉を交わしたり、錦戸亮を見たりしたらきっと彼は泣き崩れてしまうと思っていたのだろう。すばるくんが泣かなかったのは正しかったと思う。でも亮ちゃんは、すばるくんの涙を見たかったに違いない。

それまであまり別離への感情をあらわにしなかった亮ちゃんが、最後になって泣いて、そして収録を終えて帰宅してからも整理をつかない感情を前に煩悶したことを明かしてくれたのは、すごいことだと思っている。

これからの関ジャニを背負っていくというメールを最後の夜に送り、その内容はファンに秘密にしようとした亮ちゃんと、そのメールを最後のジャニウェブに書いたすばるくん。そういうのも、私が好きな気まずいそのものだった。亮ちゃんが、もっと踏みこんだ二人のことをメールに書いていれば、それは二人の間の秘密になっていったのかもしれないけれど、亮ちゃんはエイトのことを書いたので、だからこれからの未来の関ジャニ∞のためにすばるくんは我々に見せてくれたのだろう。きっと亮ちゃんは、「すばるくんが背負ってきたエイトをこれからは俺が背負う」と伝えようとした。でもその、二人きりの部分が見えなくて、あるいはすばるくんはあえて見なかったふりをして、だからこそ私たちはあの夜のメールを知ることが出来ている。すばるくんが関ジャニ∞を愛しているとわかったエピソードでもあった。

二人でご飯に行くことがずっとなかった、というのを二人のエピソードとして私たちは知っていて、おそらくそれは2017年の新年盤の特典から見た限りではまだ続いていた。けれどすばるくんを説得しようとしていた時期に、いろいろ話をした中で、亮ちゃんとすばるくんが二人きりで食事をしながら話をする、という一幕があったんじゃないかと夢想している。何年かずっとあとに、そんな話が聞けたらいい。

 

気まずい担である私にとって、エイトでの特別な曲は『キングオブ男』『LIFE~目の前の向こうへ~』『侍唄』だ。LIFEはエイトにとって思い入れのある曲だからもちろんだけれど、侍唄も二人がハモる部分があまりにも美しくて、本当に好きな楽曲だ。この中でいまだ6人エイトで歌われていないのが侍唄だから、いつか披露されたときにまたとてもしんどくなるのだろう。

『キングオブ男』で亮ちゃんとすばるくんが手を握り締めるところは楽曲のクライマックスでもあって、お兄ちゃんチームと弟チームの和解が成り立つ部分として音楽とダンスでも要の部分であり、そして気まずい担にとって最高のワンシーンなのだが、すばるくんがいなくなってなにより安否が気遣われたシーンでもある。だれが担当するのか。チーム分けされているので、村上信五横山裕であるべきだが、一人が独占するのもおかしいわけで、持ち回りとか、様々な憶測があったように思う。私は、すばるくんがいた時分から大倉忠義がやりたがっていたのを知っていて、「つっぱって」と歌われるときに彼がモニターを見ながら一人でつっぱっているという話も聞いていたので、それくらいしているのであれば大倉忠義にならその役割を譲渡してもいいのではないかとも思っていた(大倉くんが、実際のところすばるくんになって亮ちゃんと手を繋ぐことを想定していたのか、亮ちゃんになってすばるくんと手を繋ぐことを想定していたのかはわからないのだが)。それでどうなるのかなと固唾をのんで見守っていたら、錦戸亮が自分のパートのまま続けて歌った。泣かずにはいられなかった。

後日それを亮ちゃん自らが望んだと聞いて、また泣いた。

将棋崩しのように、彼が歌ったパートを六人が少しずつとってゆく。ここを歌いたいとか、ここなら歌えるとか、様々な理由で。たぶん亮ちゃんの中で、あのパートを手にすることだけは、最初から決めていたんじゃないだろうか。

東京で見た2回では、泣いてしまって錦戸亮がどんな面持ちで歌っていたのか、全然見届けられなかった。台湾でようやく、泣かずに見られた。錦戸亮は男前だった。

でも思う。すばるくんと手を繋ぐ瞬間ににやっと笑ってしまう錦戸亮が好きだった。すばるくんの歌のパートに入ってすぐに自分の手や彼の手を見つめてにやにや笑ってしまう亮ちゃん、ひっぱりすぎてすばるくんとぶつかりそうになってしまい、慌てるすばるくんの手をぎゅっとつかんで離さない亮ちゃん、あの15秒間に及ぶ私の大好きな気まずいは、永遠に失われてしまったのだ。亮ちゃんはニヤけず、男前に歌う。

 

自担がいなかったにもかかわらず台北にまで行った私ではあるが、単純に関ジャニ∞の初の海外公演楽しかったよ! という他に台北に行ってよかったなと思ったことがある。実は東京のGR8ESTに入っただけでは、6人の関ジャニ∞を実感しきれていなかった。それはたとえば、大倉忠義が腸閉塞で不在だった元気コンオーラスみたいなもので、どこかにまだ7人の関ジャニ∞があるような気がしてしまった。

でも台北を経て、もう6人なんだなと私は実感ができた。たぶんそれは、海外公演とか台北アリーナとかいうものがすばるくんの見たことのない景色だったからで、日本にあったドームでの公演とはわけが違う。いまはもう、関ジャニ∞は6人なのだなと、実感している。

わたしは十祭に入れなかったので、気まずいのユニットを自分の目で見ることができなかった。それだけがずっと心残りだ。すばるくんのソロコンには入れたし、ジャニズム福岡で、ハケるときに亮ちゃんが隣のすばるくんに抱きつくという前代未聞の場面も見ることができていたから、あんまり贅沢は言わないけれど、二人のユニットは見たかった。それは本当のところはkichuでも足りないことで、二人が二人だけで作る音楽を聞きたかった。それだけが心残りだ。

なんにせよ二人はジョンとポールだ。気まずいとかすばりょとかいうコンビ名もよかったけれど、最後の最後に私の好きだった二人は「ジョンとポール」なのだと名前をもらったことが、すごく嬉しい。ビートルズには詳しくないが、ジョンとポールの出会いが運命だったことを否定する人はあまりいないだろう。亮ちゃんとすばるくんも、運命だった。私の好きなコンビは、ジョンとポールだ。